良い刃物を選ぶときの目安の一つに、鋼(ハガネ)の材質があります。
一般的に、刃物に使われている鋼材といっても多種多様です。
それではどんな鋼材が刃物に適しているんでしょうか?

私たち職人の間では「適度な硬さと粘りがある刃物は、切れ味がよく刃持ちがよい。」と言われてきました。
しかし最近ではその上に、さびにくという条件が追加されました。

それではどんな鋼材がこの言葉に当てはまるのでしょう。
一般的に「ステンレスの包丁は、さびないけれど、切れない。
鋼の包丁は、切れるけれど、すぐにさびる。」と言われますが、ステンレスの包丁も手入れが悪ければさびてしまい、鋼の包丁でも手入れが良ければ表面が酸化し輝いていませんが、さびついてしまう事はありません。

10年ほど前、セラミック包丁が出てきた時、さびない、研がなくてよいなどともてはやされましたが、さて今はどうでしょう。
硬い刃物はもろく、軟らかい刃物は切れ止むのが早い。
本当に難しい問題です。

刃物は手入れ以外にも、熱処理や研ぎによりその良し悪しが大きく左右されます。
しかし包丁を選ぶ上で刃物鋼の大まかな性質を知っておくことは、欠かせないことだと思います。
下表は刃物鋼の性質を簡単に記しました。
あくまで参考程度とし、いろいろな鋼材をお試しになり、自分に合う鋼材をお求めください。

玉鋼

日本古来の製鉄法による「たたら」でつくられた鋼です。
刀や高級打刃物の原材料になります。

青二鋼

タングステン、クロームなどの特殊鋼を含むため、焼入れ時に安定感があり、切れ味、刃持ちが良いです。
和包丁の高級鋼とされています。

白二鋼

良い職人が鍛え、仕上げ、熱処理がうまくいくと、青二鋼以上のあま切れする良い刃物ができることがあります。
また、良い仕上げ砥石で研ぐと、刃が砥石に吸い付く感じがします。

黄鋼

使用頻度の少ない一般家庭用の和包丁であれば、研ぎやすさ、価格の割安感がありますので、よいとおもいます。

銀三鋼

さびにくく、硬度はありますが、研ぎ・修理をする上で刃物用の鋼材としてはおすすめしにくいですが、ナイフ用鋼材としてはよいと思います。

日本鋼

SK材といわれている工具用の鋼です。牛刀など洋包丁に多く使われています。価格の割安感があります。

モリブデン鋼

モリブデンはさびにくいという特徴を持っています。焼入れ性も増すため、切れ味も向上しています。
お手入れの苦手な方におすすめです。

スウェーデン鋼

スウェーデン産の優良原鉱石を木炭銑で造られた鋼で、Cu(銅)やP(りん)など鋼の不純物が少ないようです。
しかし現在は木炭銑ではなく電気炉製鋼になっているため、本来の性質が薄れたように思います。

自分に合う刃物の鋼材は?

刃物の鋼材は一長一短あります。
しかし「切れ味」「サビに対する強さ」「使いやすさ」「価格」などの条件で絞り込むことにより、自分に合うものが見つかります。
残念ながら、今のところすべての条件を満たす鋼材はないので、刃物を買うときは、どこに一番重点を置くかがポイントとなります。